2022年12月31日第239回「今月の映画」「RRR(アールアールアール)」
監督・脚本:S・S・ラージャマウリ N・T・ラーマ・ラオJr.(通称NTRJr) ラーム・チャラン
(1)今回の映画『RRR』はとてつもない映画でした。イギリス植民地時代のインドの映画で、思い切り楽しみたい人には不可欠の映画ですが、少し、気が小さいと思われる人には、特に前半は強烈過ぎて、避けた方が良さそう(?)です。
『RRR』という不思議なタイトル名≪≪最後の「5」に説明あり≫≫でもあり、訳も分からずに見ていた私は、前半は余りにも強烈な場面が多い上に、スケールが大きく、エキストラ6000人を動員した超絶アクションには、気が小さい私には、かなり強烈な印象の連続でした。 しかし、後半はとても見応えがあり、特に、終盤の城の前での膨大な人数でのダンスは≪≪壮絶・壮烈≫≫と言いたいほどの、見応えがある素晴らしい場面でした。 しかし、人類は「戦争」の連続、「植民地支配」の連続、ロシアとウクライナの戦争、湾岸戦争、ベトナム戦争、共産主義国家と自由主義国家の争い、アヘン戦争、「鎌倉殿の13人」、戦国時代、日清・日露戦争、第一次・第二次世界大戦etc.
**「映画で理解するインドは何が凄いのか?」(日刊ゲンダイ、12月17日) <大ヒット中の「RRR」は製作費97億円> <寄稿・社会情報大学院大学特任教授 北島純先生> <略> ・・・インド映画はいま世界的な脚光を浴びている。 その背景にあるのが、近年増す一方のインドの存在感だ。地球の人口80億人のうちインド人は約14・2億人。中国(約14・3億人)を抜いて2023年には世界一になる見込みだ。米中冷戦でサプライチェーンの分断が起きる中、工場や調達先を中国から他へ移動させる「脱中国」を余儀なくされるグローバル企業が熱い視線を送る先が巨大市場インドである。世界最大のデモクラシー国家としての政治的安定性と豊富な人的資源がインドの戦略的重要性を押し上げている。ウクライナ戦争におけるロシアと米欧の対立でもモディ政権の巧みな中立外交は光っており、「ロシアから撤退、中国も危ない」となると、投資先、ビジネス進出先としてインドの魅力は今後さらに増すに違いない。 わが国にとってインドは「自由で開かれたインド太平洋戦略」の要でもあり、今後の台湾有事を想定した場合、いっそうインドの地政学的重要性は顕著となろう。 他方で、植民地支配の置き土産とも言うべき「英語」がインドの人的資源を支える基盤にもなっている。英語話者の数はアメリカに次ぐ10億人。論理的思考に強いという評価も高く、プログラミングを中心とするIT分野で世界的な人材を輩出しており、マイクロソフト、グーグル、アドビのCEOは皆インド人だ。英国でも10月に首相に就任したリシ・スナク(42)は、パンジャブ地方に由来するインド系移民の息子で、英国史上初めての「非白人・アジア系・ヒンドゥー教徒」の宰相になった。21世紀は「インドの時代」という声も上がる。 無論、インドとてカースト制や貧富の差、宗教対立や腐敗といった問題を抱えている。しかし「多様性の中の統一性」を追求しつづけるインドの政治や文化の背景には、植民地支配からの脱却を勝ち取った独立運動への強いリスペクトがある。実在する独立運動の指導者コムラム・ビームとアッルーリ・シータラーマ・ラージュをモデルとした「RRR」は、そうしたインド社会を知るためにも必見の映画だ。 ≪≪私・藤森の記憶では、「数字のゼロ≪≪0≫≫」を考案したのは、インド人だったと記憶しています。≫≫ |
(2)「INTRODUCTION」
数々の興業新記録を打ち立て、全世界に“バーフバリ旋風”を巻き起こしてインド映画の歴史を変えた映画史上最大の叙事詩にして、もはや神話ともいうべき伝説の2部作『バーフバリ 伝説誕生』と『バーフバリ 王の凱旋』。その想像神S.S.ラージャマウリ監督による全宇宙待望の最新作がついに完成した。 『バーフバリ』2部作を足した額を遙かに超えるインド映画史上最大の制作費7200万ドル(約97億円)をかけたその超大作の名は『RRR』。物語、水、炎、蜂起、咆哮、反乱、怒り、戦争、血・・・など、英語や南インドの各言語の単語に含まれる様々なRを合成させた意味を持つこの映画は、イギリス植民地時代のインドを舞台に、実在した2人の独立闘争の英雄が、愛と友情のために命をかけて闘う姿を、驚きと興奮に満ちたパワフルで壮大なアクションの連続で描いたスーパー・エンターテイメント巨編だ。 大群衆に包囲された荒野の警察署での1人対数十万人の攻防戦、燃え盛る燃料運搬船の爆発からの決死の少年救出劇、大英帝国総督公邸に野生動物の群れを放つ野獣大作戦、友情の肩車で大軍勢を撃破する奇跡の脱獄ミッション、そしてお持ちかね、西洋VSインドのノンストップ耐久ダンス・バトルに、主要キャストに監督までが踊る絢爛豪華な大団円・・・、全編が想像を絶するアイデアを満載した見せ場の連続! 映画の面白さをすべて詰め込んで見る者を徹底的に楽しませ、ストレスも鬱積も吹き飛ばす驚愕、極楽の3時間!これを見れば明日の勇気が湧いてくる究極のエナジーチャージ・ムービー! すでに全米、全英で『バーフバリ』2部作を超える興行成績初登場第3位となるヒットを記録、全世界で1億6000万ドル(約220億円)を突破する興行収入を記録している2022年最大の話題作!それが『RRR』なのでアール! 1920年、反英独立運動の炎が各地で燃え上がるイギリス植民地時代のインド。英国人の総督に連れ去られた幼い少女を奪還するために、南インドの森からデリーにやってきた男ビームと、ある大志を持って総督指揮下の警察官となったラーマ。熱き魂を持った2人の男の友情と対立、その巨大なエネルギーが激突し、やがてひとつになったとき、インドの歴史が自由と独立に向けて大きく動き出す!警察官から伝説の闘士となるA・ラーマ・ラージュを演じるのは、テルグ語映画界のトップスター、≪≪メガパワー・スター≫≫こと『マガディーラ 勇者誕生』のラーム・チャラン。南インドの森林地帯に住むゴーンド族のリーダーで同じく伝説の闘志コムラム・ビームには、ラーム・チャランと並ぶテルグ語映画界のトップスターで、ダンスの巧さに定評があり日本では“進撃のインド人”動画でも知られる『バードシャー テルグの皇帝』のNTRJr.。この2大スターが夢の共演を果たしたことだけでもこの映画はインド映画界の“事件”といえる。その他、ラーマの許婚シータを演じるのは、『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』、『ガリー・ボーイ』などで人気絶頂のボリウッド・スター、アーリヤー・バット。ラーマの父で伝説の闘士ヴェンカタ・ラーマ・ラージュには『ミモラー心のままにー』のアジャイ・デーヴガン。その妻サロージにには『ボス その男シヴァージ』のシュリヤー・サラン。また、英国領インド帝国総督スコット・バクストンには『マイティ・ソー』3部作や『トランスポーター:イグニション』などの北アイルランドの名優レイ・スティーヴンソン。 |
(3)「STORY」
1920年、イギリス植民地時代のインド。インド人の人権を無視し、支配者としてふるまうイギリス人たちの政策に、民衆の怒りは沸点に達し、反映運動の炎が各地で燃え上がっていた。 英国領インド帝国総督スコット・バクストンは狩猟を楽しむため、妻キャサリンを連れて南インドのアディラーバードの森林地帯にあるゴーンド族の村を訪れた。キャサリンはそこでヘナアートの才能を持つ幼い娘マッリを気に入り、数枚のコインで彼女を買おうとする。それを拒む両親や村人たちを足蹴にし、総督一行は強引にマッリをデリーの公邸に連れていってしまう。 その頃、デリー郊外では逮捕された反英活動家の釈放を求めて、群衆が警察署を取り囲んでいた。インド人警察官A・ラーマ・ラージュは、単身群衆に飛び込み、群衆のリーダーを逮捕して騒ぎを収めた。だが、彼の命がけの仕事ぶりをイギリス人の上官は無視し、インド人である自分が昇進できないことに、ラーマは強い憤りを感じていた。 半年後、総督府にはゴーンド族の精鋭が娘を奪還するためにデリーの街に集結しており、襲撃の機会を狙っているという情報がもたらされていた。警備に関する会議の席上、総督夫人は街に潜む部族のリーダーを生け捕りにした者を特別捜査官に昇進させると宣言、ラーマはその捜査責任者に立候補する。 マッリ奪還の機会を窺うゴーンド族のリーダー、コムラム・ビームは、アクタルと名乗りイスラム教徒の整備工一家に匿われていた。一方、ラーマは警官であることを隠し、反映活動家たちの集会に潜入し、ゴーンド族の足取りを探りはじめる。 ある日、ラーマとビームは、偶然にも燃料運搬列車が鉄橋で爆発事故を起こした現場に遭遇する2人は幼い少年が事故に巻き込まれそうになっているのを見るや、危険を顧みずに阿吽の呼吸で協力し、少年の命を救う。その瞬間、2人の男はお互いの素性も知らないまま、真の友との運命的な出会いを感じるのだった。 その日以来、ビームはラーマを兄貴と呼び、友情と信頼を深めていく。あるときビームはイギリス人に叱責されるインド人を労る優しい白人女性の姿を見て一目惚れする。ラーマの機転で話す機会を得たビームは、彼女が総督の姪ジェニーで、探しているマッリが彼女の住む公邸にいることを知った。翌日、ジェニーに社交クラブでのパーティーに誘われたビームはラーマと共に参加する。パーティの後、公邸に招かれたビームは、隙を見てマッリの居場所を確認、マッリに必ず迎えに来ると誓うのだった。 数日後、公邸でナイト爵を授かった総督を祝うため盛大なパーティが開かれることを知ったビームは、パーティを襲撃してマッリを奪還する計画を立て、実行に移す。トラックで正門から公邸に突っ込んだビームたちは、荷台の檻に入れていた虎や豹などの野生動物たちをその場に放ち、パーティをパニックに陥れるとマッリの行方を追った。ビームが遂にマッリを発見し、あと一歩で彼女を救出できると思ったその瞬間、ビームの行く手を阻止したのは警官の制服に身を包んだラーマだった。 激しい死闘の末、ビームはラーマに逮捕されてしまう。やがて、総督からビームの処刑命令が下り、ラーマは苦悩する。実はラーマが警察官になり、警察内での昇進に拘わっていたのには理由があった・・・。 ラーマは反英闘争を率いて命を落とした伝説の闘士ヴェンカタ・ラーマ・ラージュの息子だった。彼は父の願いで警察官となり、武器管理を担当する地位についた後、大量の武器を仲間たちに渡すことで反英闘争を勝利に導き、イギリスの支配を終わらせることが彼の真の狙いだった。そして、その目的は達成寸前まできていた。だが、ラーマは自らの目的よりもビームの命を救うことを選び、総督を騙してビームとマッリを逃がすと、自らは逮捕されてしまう。 ビームは仲間たちと逃亡生活を続ける中、ある街で偶然、ラーマの許婚シータと出会う。ビームはシータからラーマが警察官になった本当の理由と、ビームとマッリを逃した罪を問われ、彼が数日後に処刑されることを知らされ愕然とする。インドの未来を考えたラーマの大志を知ったビームは、急ぎラーマの救出に向かった。2つの燃え盛る熱き魂が、ついにお互いを理解し、真の友情で力を合わせた時、インドの歴史は自由と独立のために大きく動き出そうとしていた・・・。 |
(4)「主人公のモデル」
本作の2人の主人公A.ラーマ・ラージュ(1897か1898~1924)とコムラム・ビーム(1900か1901~1940は、どちらもインドの独立運動の英雄として今も人々の尊敬を集める実在の人物である。しかし、実際にはこの2人は出会うことはなかったという。 本作は、この2人の人物がもし出会ったら?という大胆な発想から誕生したフィクションである。 |
(5)「RRRとは?」
本作はS.S.ラージャマウリ監督と初共演となる主演2人のスター、ラーム・チャランとNTR Jr.の名前にあるRを3つ重ねた仮題として企画がスタートした。 当初の読み方はトリプル・アールだった。その題名がファンの間で好評を博したため、そのまま本題名となり、読み方はアール、アール、アールと変更となった。 英語では蜂起(Rise)、咆哮(Roar)、反乱(Revolt)の頭文字を取ってRRRとなっているが、テルグ語、タミル語、カンナダ語、マラヤーラム語では、「怒り」、「戦争」、「血」を意味するRの入ったそれぞれの単語が、RRRのサブタイトルとして付けられている。 |
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