2021年8月31日第223回「今月の映画」「ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~」
監督:飯塚健 主演:田中圭 土屋太鳳 山田裕貴 眞栄田郷敦 小坂菜緒 濱津隆之
(1)この映画は本当には感動!!しました。テストジャンパーという重要な役割も初めて知りました。
確かに野球でもそうですが、雨で中断した後のグランドを整備するのと同様、スキージャンプの場合も、雪が降った後の危険性をチェックする必要があります。 鉄道のレールのような道筋に雪が積もると滑走することに問題が生じます。雪の降り具合もチェックが必要で、オリンピックの種目として、試合を継続することが妥当かどうか、かなり厳しい状況の中、テストジャンパーたちにテスト滑降してもらうことになりました。 万一、25人のテストジャンパーのうちの誰かが滑降に失敗すると、試合は中止になり、日本は4位で修了です。かなり危険な状況の中、テストジャンパー25人の必死のテスト滑降が始まります。 その25人の中には、いろいろな背景を持っているテストジャンパーたちの必死の滑降が始まり、そして、全員の奇跡的な成功があったからこそ、試合が継続され、日本チームが劇的な金メダルに輝くことができました。 文字通り、本当に奇跡的な実話で、文字通りの「縁の下の力持ち」を実感させてもらいました。全てに「縁の下の力持ち」がありそうで、そういう感覚を大事にできる人間性をさらに大切にしたいと思いました。 <見えるものは、見えないもののあらわれ、です。> |
(2)「Introduction」
<<1998年長野オリンピック、日本中が歓喜に沸いたスキージャンプ団体、大逆転の金メダル。 この栄光を陰で支えた25人のテストジャンパーたちの、知られざる感動秘話が映画化!>> 主人公はスキージャンパーの西方仁也(にしかた・じんや)。1994年のリレハンメルオリンピックジャンプ団体戦で“日の丸飛行隊”のメンバーとして日本代表を牽引するも、エース原田雅彦のジャンプ失敗で金メダルを逃し、長野オリンピックでの雪辱を誓い日々練習に励み、代表候補として有力視されていながら、惜しくも落選。テストジャンパーとなり日本代表選手たちを裏方として支えた人物です。 物語は、西方の金メダルへの強い想い、それを打ち砕く挫折、原田との友情、怒りと嫉妬、それでも仲間のために、日本のために、命の危険を顧みずテストジャンプに挑む、深い人間ドラマを映し出します。また、映画の中では、視覚障害がありながらも、国際スキージャンプ競技大会で優勝した実在の選手・高橋竜二や、ケガを負ったことでトラウマを抱えた選手、また女子スキージャンプがオリンピック種目になかった当時、テストジャンパーとしてでも長野オリンピックに参加したいという熱い想いを持った実在の選手・葛西賀子をモデルにした、唯一の女子高生ジャンパーなど、様々な背景を背負ったテストジャンパーたちの熱い想いや、葛藤も色濃く描かれます。 長野オリンピックでの手に汗握る団体戦の攻防、吹雪による競技中断、そんな中、競技が再開できるかを図るために行われた、西方率いる25人のテストジャンパーたちの決死のジャンプを、実話に基づいてダイナミックに描いたオリジナルストーリーです。 原田選手が金メダル獲得後インタビューで語った「俺じゃないよ。みんななんだ。みんな」という言葉は、岡部孝信・齋藤浩哉・船木和喜ら代表選手だけでなく、裏方に徹し日本選手団を支えた親友・西方、そしてテストジャンパーたちにも向けられた言葉だったのです。そんな西方と原田の熱い友情と絆、そして25人のテストジャンパーたちと日本代表選手たち、それを支える家族や関係者たちの想いを知ったとき、誰もが心を打たれる感涙必至のヒューマンドラマがここに誕生しました。 |
(3)「Story」
長野オリンピック・ラージヒル団体で日本初の金メダルを狙うスキージャンプチーム。そこに、エース原田のジャンプを複雑な想いで見つめる男・・・ 元日本代表・西方仁也(田中圭)がいた。前回大会・リレハンメルオリンピックで、西方は原田とともに代表選手として出場するも、結果は銀メダル。 4年後の雪辱を誓い練習に打ち込んだが、代表から落選。失意の中、テストジャンパーとしてオリンピックへの参加を依頼され、屈辱を感じながらも裏方に甘んじる。 そして迎えた本番。団体戦の1本目のジャンプで、日本はまさかの4位に後退。しかも猛吹雪により競技が中断。メダルの可能性が消えかけたとき、審判員たちから提示されたのは、「テストジャンパー25人全員が無事に飛べたら競技を再開する」という前代未聞の条件だった・・・。 命の危険も伴う悪天候の中、金メダルへのかすかな希望は西方たち25人のテストジャンパーに託された・・・。 この隠された真実に、あなたはきっと、涙する・・・ |
(4)「Creators」
<スキージャンプ団体金メダルの裏側にあった物語をいつかやってみたいと思っていました。>(監督:飯塚健) 襷をつなぐように、大げさではなく命懸けでスタートを切ったテストジャンパーたち。長野オリンピックでのスキージャンプ団体金メダルの裏側にあった物語は、以前からいつかやってみたいと思っていた題材でした。日本人のメンタリティーに響くものがあって、何より実話の力がある。しかもそれが嘘みたいにドラマチックなんですね。この秘話を知ったのはドキュメンタリーでしたが、オリンピック自体もともと好きでよく観ていました。 13歳のときにバルセロナオリンピックがあって、同学年の岩崎恭子さん(200m平泳ぎ)が金メダルを獲ったことの衝撃はすごかったです。中学生のお小遣いでは高価な大判の公式写真集まで買ってしまったくらいですから(笑)。長野は19歳のときで、もちろん原田雅彦さんの大ジャンプのあとの「舟木・・・舟木い~!」も記憶にあります。そんな中で、記録には残らないけれど競技再開に向けて飛んだ人たちがいた。その事実に胸を打たれました。 ただ、それを映画として描き出すのは、難しいだろうなとも思いました。予算や環境のこともありますが、問題はリアリティー。ランナーやボクサーの話は俳優本人がある程度やることによって、そこは担保できる。でもスキージャンプだけは、何をどう努力しても俳優本人が実際に飛べるはずもないんです。表情を中心に切り取っていくとなっても、そもそもゴーグルをしているので顔を見せられない。 ジャンプのダイナミックさは時間とテクノロジーを使えば描けるにしても、着地後の地に足がついてからの芝居にすべてを集約しないと意味がないと思っていました。なぜならジャンプを何カット上手に割って見せてもテクニカルな事柄でしかなく、ドラマとは関係ない。爽快感は演出できても、カタルシスは演出できないんです。やっぱり大きいのは、飛ぶ前後の人間ドラマ。だからこその田中圭くんのキャスティングという意図はありました。 圭くんは、相手を受ける芝居が達者な俳優さん。映画の中の西方仁也は、主人公でありながら自分からは発信しなくて、最後までもやもやしてしている。そこは脚本作りでも議題になりましたが、圭くんであれば成立すると思いました。彼の場合、相手を受ける顔が5秒あったとしたら、1秒ごとに変化する表情の“提出”があって、ちゃんと内面が揺れている。それが映ることで西方の人間味が出て、記号的な嫌な奴にならずに済んだと思っています。 私にとって『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』は、脚本のアイデアや編集にも関わっていますが、初めて“監督”だけのクレジットで臨んだ作品です。そうすることで他作品との差別化を図り、より作品を俯瞰で見ることができ、よりこだわって撮れた気がしています。初めての挑戦にも経験にもなった作品。それがこの『ヒノマルソウル』であったことは、意義深かったです。 <映画監督。脚本家。1979年生まれ。2003年、石垣島を舞台にした群像劇『Summer Nude』でデビュー。弱冠22才で監督を務めたことが大きな反響を呼んだ。以後『放郷物語』(06)、『彩恋 SAIREN』(07)など青春の切なさを生き生きと描く映像作家として頭角を現す。また「FUNNY BUNNY」を始めとする演劇作品、ASIAN KUNG-FU GENERATION や OKAMOTO’S、降谷建志らのMV、小説、絵本の出版と、活動の幅を広げる。代表作に『荒川アンダー ザ ブリッジ』シリーズ(11ドラマ、12映画)、『風俗行ったら人生変わったwww』(13)、『大人ドロップ』(14)、「REPLAY&DESTROY」(15ドラマ)、『笑う招き猫』シリーズ(17ドラマ、映画)、『榎田貿易堂』(18)、『虹色デイズ』(18)、『ステップ』(20)など多数。最新作は『FUNNY BUNNY』(21)。> |
(5)「Creators」
≪≪『Life 天国で君に逢えたら』(07)『余命1ヶ月の花嫁』(09)『抱きしめたいー真実の物語ー』(14)『チア★ダン』(17)『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17) 数々の実話の映画化を手掛けてきた集大成となる作品>≫≫(企画プロデュース:平野隆) 私はこれまで実話の映画化を5本手掛けてきましたが、きっかけはすべて自分がその実話に心震わされたからでした。 死に直面された方と、ご家族や恋人との熱くて強い“想い”。ハンディキャップを背負ってもひたむきに前を向く“生きる力”。前人未踏の夢に挑戦していく少女たちの“情熱”。絶望的な状況の中でも命を信じ続ける“愛の力”。どの映画も完成した瞬間、安堵と共に「この仕事をしていて良かった」という充足感を得ました。安堵と言ったのは、製作中はモデルとなった方々に対して、常に責任とプレッシャーを感じていたからです。 そういったこともあり、実話の映画化には極めて慎重な姿勢でいたのですが、『ヒノマルソウル』はこれまでとは違った形で私の心に響いてきました。 長野オリンピックスキージャンプ団体での金メダル獲得は、オリンピック史上日本人に最も感動を与えた出来事ですが、それだけでは映画にはならないと思っていました。私の心を震わせたのは、西方仁也さんという人物の“挫折”と“再生”、そして25人のテストジャンパーたちの“献身”でした。 今世の中の大多数の人たちが自分のことを裏方だと感じていると思います。スポットライトが当たらなくても、それぞれの場所で精一杯“何か”もしくは“誰か”のために生きていく。私はそんな裏方の象徴として西方さんを捉えていました。この物語は私にそうであったように、きっと多くの方々にも希望と勇気を与えてくれる。そう信じて映画化に向かい動きはじめました。 この物語で描かれている西方さんは決してスーパースターではありません。田中圭さんに西方さんを演じてほしいと思ったのは、田中さんが長い下積みを経て現在に至っていると感じていたからです。田中さんならばきっと西方さんの“痛み”を肌で感じ取り、まっすぐに表現してくれるのではないかと思いました。 脚本制作中に、珍しいことなのですがひとつのフレーズが頭の中で浮かんできました。日々歯を食いしばり耐えがたきを耐えている日本中の仲閒たちにこの映画を届けたい、裏方にも栄光の瞬間があることを伝えることができたら・・・そんな想いから、サブタイトルに「舞台裏の英雄たち」とつけました。 <大分県生まれ。一橋大学卒業後、TBSに入社。実話の映画化だけでなく、『黄泉がえり』(03)、『どろろ』(07)、『忍びの国』(17)、『七つの会議』(19)、『スマホを落としただけなのに』(18)、『糸』(20)、などヒット作が多数。公開待機作に『かぐや様は告らせたい2~天才たちの恋愛頭脳戦~(仮)』(21 8月公開予定)、『老後の資金がありません!』(21 秋公開予定)など。> |
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