2021年4月30日第219回「今月の映画」「モンスター・ハンター」
監督:ポール・W・S・アンダーソン 主演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、トニー・ジャー、山崎紘菜
(1)久しぶりに眠くならなかった映画です。凄いな!どうやって撮影するのだろうか。かなり実写的というか、モンスターの撮影に驚きましたが、さらに驚いたのは、「モンスター・ハンター」は、日本のカプコンという会社のゲームだったのですね。
監督の話<<このゲームが大好きだったからで、趣味がこうじてできた作品だね。カプコンに映画化の話を持ちかけた時は、まだ日本国内だけで大ヒットしていて、世界に知られる前だった。幸運にも、映画化するのに10年かかって、その間に世界中でもヒットしたから、今ではみんながどんなにカッコいいゲームか知っている。>> <<僕たちはモンスターの戦闘シーンのラフカットを持って日本に行き、カプコンのゲームクリエイターに確認してもらったんだ。そこで、モンスターのビジュアルや動きについて指摘してもらった。>> <<全般にわたってカプコンの協力を得たんだ。ゲームファンのためにも、僕らのためにも、できる限りゲームに忠実に再現したかったからね。素晴らしいことだったよ。僕は彼らの作ったものの大ファンだった>> こういう映画だったのですね。日本の有名なゲームだったり、猛烈なアクションを展開するハンター、ミラ・ジョヴォヴィッチが監督の妻だとか、映画の80%は現在の景色を使っているとか、毎回、4トンの車を30~40mの距離投げ飛ばしていたのだとか、私・藤森には驚くばかりの映画でした。 |
(2)「COLUMN:01」(JUNKHUNTER YOSHIDA ジャンクハンター吉田)
ポール・W・S・アンダーソン監督が見事実写映画化した「モンスターハンター」。ゲーム原作映画はヒットに恵まれないという定説を覆した「バイオハザード」シリーズ同様、『映画 モンスターハンター』から次へ繋がっていく展開に期待を抱くファンも多いだろう。そこで、彼のデビュー作から“ビデオゲームx映画”を融合してきた第一人者として深く掘り下げてみたい。 <「バイオハザード」でヒットメーカーとなり、培った遺伝子を「映画・モンスターハンター」へ継承> いきなりハリウッドデビューのチャンスを掴んだアンダーソン監督は、シリーズ化されていた「モータル・コンバット」を徹底的にプレイする勉強する日々。ビデオゲームとテクノミュージックの相性の良さをヒントに、劇伴で巧みにフィーチャーし見事な融合に成功。サントラが好調な売り上げを記録しつつ、劇場版の続編、テレビアニメシリーズ、スピンオフ作品まで作られ、多くのフランチャイズ化成功の鍵はアンダーソン監督だったことは説明不要であろう。 その後『イベント・ホライゾン』(97)、『ソルジャー』(98)と率先してSF作品を監督するも大ヒットにまで到らず、せっかく掴み取ったハリウッドでの栄光が失速していった最中に2度目のチャンスが訪れる。ジョージ・A・ロメオ監督、サム・ライミ監督が候補に挙がっていたのを押しのけ「バイオハザード」の実写映画化の監督に選ばれたのだ。 背水の陣で挑んだ「バイオハザード」の実写映画化に関し、映画ならではのオリジナル要素を加味しつつ、ゲーム内で作られた世界観を壊してはならない演出に相当プレッシャーがあった。そこでミラ・ジョヴォヴィッチ演じるアリス(ゾンビ版「不思議の国のアリス」が裏テーマになっている)という映画だけのオリジナルキャラクターを登場させ、そのキャラクターをなんと主役に据える。アンダーソン監督もゲームファンから賛否が出るのを覚悟しての起用だったが、この判断が大成功を収める結果に繋がった。既存のゲームファン以外からも支持されたのだ。 長きにわたり作られていった実写映画版『バイオハザード』シリーズも完結し、ミラ含め関係者たちはかねてから水面下で進行していた「モンスターハンター」の実写化へ挑むことに。アンダーソン監督は『バイオハザード』で得たノウハウを用い、実写映画化する際のオリジナル要素としてミラを主役に再び起用する。今回は特殊部隊の大尉役のため、いつも以上に筋肉量を増やし『バイオハザード』の頃を超えるハードなアクションにミラを挑ませた。劇中本編における彼女の身体能力を限界まで引き出したポテンシャルは圧巻の一言で驚愕。アンダーソン監督も自身の妻だったからこそ無理強いできたのだろうと考えると、普段は優しそうなニヤケ顔が鬼に見えてくる。 「モンスターハンター」の世界へ迷い込んだ特殊部隊が、モンスターと遭遇するも現代兵器が役に立たず、命懸けの死闘を繰り広げ戻ってくるまでのシンプルな展開。怪獣映画などの巨大生物が登場する作品へのオマージュも満載で、ゲーム版「モンスターハンター」を知らない一見さんでも楽しめるアクション映画へと昇華しているのはお見事。米国以上に日本でも大ヒットして、『バイオハザード』と同じく長期的なシリーズ化を希望! <映画・ゲーム系コラムニスト・・・本名吉田武。国内外問わず映画を題材にしたゲームを遊びつくし、“シネマゲーム研究家”として活動していたが、現在は交通違反や事故を撲滅させるべく交通ジャーナリストとしての活動がメイン。興味あるオファーがあれば、年に数本程度は映画のパンフレットなどに寄稿している。著書に「ゲームになった映画たち」シリーズ(三才ブックス)など。> |
(3)「PRODUCTION NOTES」
<異世界に迷い込む特殊部隊員> 国連合同軍事演習のリーダーで、特殊部隊を率いるベテラン隊員のアルテミスを演じるのは、ミラ・ジョヴォヴィッチ。夫でもあるアンダーソン監督と再び手を組むこととなった。「モンスターをやっつけていく役として、ミラ以上の役者がいるだろうか?」とアンダーソン監督は言う。「彼女はアクション俳優であるだけでなく、登場人物を役として実現する力がある。 また、ミラは膨大なリサーチを行い、米軍との訓練まで行った。女性の特殊部隊員は世界中に18人しかいないのだが、その方達と仲良くなり、最終的には本作の軍事アドバイザーにまでなった。実は、ミラが演じる<ナタリー・アルテミス>という名前は、今回仲良くなった特殊部隊員の名前を借用している。観客はアルテミスにすっかり魅了されてしまうだろう」 ラッパーで俳優でもあるティップ・“T.I.”・ハリスはリンク役として出演している。ベテランの特殊部隊員で、アルテミスの右腕的な存在だ。「アルテミスとリンクはこれまでにも厳しい場面に遭遇してきたが、今回の危機に直面した時の2人の化学反応は見物だ」とハリスは言う。 同特殊部隊には通信担当のマーシャル軍曹もおり、メキシコ人俳優のディエゴ・ボネ-タがこの役を演じた。「この映画については、視覚効果が大量に使われている『ターミナル:ニュー・フェイト』の撮影中に初めて話を聞いた。そのため、ポールからCGの要素をあまり多く入れないで、実際のロケーションで撮影したいという説明を聞いて、すぐに参加することにした」 ミーガン・グッドは自身の演じるダッシュを「機械工として技術力があり、ドライバーとしても素晴らしく、フットワークも軽い」と説明する。「脚本を読み始めたら止まらなくて、私も冒険に参加することにした。あらゆるものが脳内で鮮明にイメージできた」 |
(4)<ロケーション撮影>
モンスターたちはCGで作るものの、アンダーソン監督には、出演者の撮影を緑のスクリーンの前で行ったり、スタジオのバックロットで行ったりすることは避けるという断固たる決意があった。「ゲーム内の素晴らしい景色にインスパイアされ、現実世界のそのような場所を探そうと思った。映画の80%は現在の景色を使っている。残りの20%はモンスターの場面だ」 特に幻想的だったのは、ディアブロス亜種が棲んでいるという設定の砂の海だ。この場所で初めて特殊部隊員たちがモンスターからの攻撃を受けるのだが、これはケープタウン近くにある壮観なアトランティスデューンズという場所で撮影をした。真っ白な砂で有名な場所だ。 この場所で特殊効果チームが困難を極めたことは、ディアブロス亜種の力強さを表現するために、ハンヴィーを投げ飛ばすことだ。「アメリカ産のハンヴィーは1台の重さが約4トンあって、動かすのは難しい」と特殊効果スーパーバイザーのジョナサン・バラスは言う。 「ハンヴィーに衝撃を与えるため、高圧砲で50バールの圧力を加えた。車の中に砂を入れ込み、圧力が上ではなく下にかかるよう工夫したところ、30~40mの距離を飛ばす事に成功した。私たちは毎回、4トンの車を投げ飛ばしていたんだ」 砂嵐に襲われた時のハンヴィーの中の様子を見せるため、特殊効果チームは転がるローラータイプのリグを造った。「ハンヴィーの中を想定した空間は車1台分ほどの大きさになったのだが、それを2つのローラーの間にバランスを取って設置した」とバラスは言う。「それを好きなスピードで回転させることができる。その中にミラやほかの出演者が入るんだ。巨大なドラム式乾燥機のような感じで、中ではみんなが飛び回っている。決して心地よくなかったと思うが、なんとか耐えてくれたよ」 |
(5)「インタビュー」(監督/脚本/製作:ポール・W・S・アンダーソン)
この物語の核にあるのは、アルテミスとハンターの関係だ。 ・・・「モンスター・ハンターを実写映画化しようと思ったきっかけは何ですか?」 このゲームが大好きだったからで、趣味がこうじてできた作品だね。カプコンに映画化の話を持ちかけた時は、まだ日本国内だけで大ヒットしていて、世界に知られる前だった。幸運にも、映画化するのに10年かかって、その間に世界中でもヒットしたから、今ではみんながどんなにカッコいいゲームか知っている。 ・・・どのようにモンスターを創り上げていったのですか? 僕たちはモンスターの戦闘シーンのラフカットを持って日本に行き、カプコンのゲームクリエイターに確認してもらったんだ。そこで、モンスターのビジュアルや動きについて指摘してもらった。たとえば、「ディアブロス亜種の爪が尖りすぎている」とかね。 「え、そんなところを見ているの?」って驚いたよ。モンスターがアルテミスの頭に噛みつこうとしているのに、彼らは爪まで見ていて、しかも、どう直すべきか教えてくれるんだ。全般にわたってカプコンの協力を得たんだ。ゲームファンのためにも、僕らのためにも、できる限りゲームに忠実に再現したかったからね。素晴らしいことだったよ。僕は彼らの作ったものの大ファンだったわけだからね。 <後略> |
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