2021年12月31日第227回「今月の映画」「老後の資金がありません!」
監督:前田哲 主演:天海祐希 松重豊 新川優愛 瀬戸利樹 加藤諒 若村麻由美 柴田理恵 友近
(1)今回の映画「老後の資金がありません」は、どう見ても、ジョークたっぷりの映画だと思いました。事実、ジョークがたっぷりの流れですが、ジョークのたびに、笑うというよりも涙がしばしば溢れました。
最後の(7)で、経済ジャーナリスト・荻原博子先生がおっしゃる言葉。 ≪≪この映画は、“老後の資金”という題材の中で、人が前を向くことの大切さ、人の温かさなども学べて、観るとプラスになる作品だと思います。≫≫ 「生前葬」や「シェアハウス」など、楽しみながら学んでみてください。 |
(2)「INTRODUCTION」
人生100年時代、老後資金は2000万円必要!? 親の葬儀、娘の結婚、夫の失業、そして浪費家の姑との同居・・・・ 主演・天海祐希演じる普通の主婦が、現代日本が抱える家庭のお金の危機に立ち向かう! いまや60歳になっても働くのは当たり前、「人生100年時代」の日本。年金や貯蓄だけで、老後の生活は大丈夫なのだろうか。社会の仕組みもどんどん変わっていき、どんなに準備をしても、不安は募るばかり・・・。「老後の資金は2000万円必要」とも言われる中、生きていく上で必要な供えとは?社会の最小単位である家庭の切実な課題であり、現代日本が抱える大問題に、普通の主婦が立ち向かう、痛快なコメディ・エンターテインメントがここに誕生! 原作は、巧みな設定で読者の共感を呼んでいる稀代のストーリーテラー垣谷美雨の40万部を突破したベストセラー小説「老後の資金がありません」(中公文庫)。親の葬式、子供の派手婚、夫の失職、セレブ姑との同居・・・次々と襲いかかるお金の災難に振り回される主人公・後藤篤子の奮闘が、小気味よく綴られた物語だ。この、老後の資金問題というシリアスなテーマをユーモラスに描いた原作に引きつけられた製作陣は、”大人が見られるコメディ映画”化を目指し、製作をスタートさせた。 篤子役として白羽の矢が立てられたのは、日本最強のコメディエンヌ・天海祐希。数々の作品で、デキる女性を鮮烈に体現してきた天海が、本作では、平凡な主婦の魅力を引き出し、誰もが迎える問題にあたふたしつつも、家庭を切り盛りする篤子役を鮮烈に体現してきた天海が、本作では、平凡な主婦の魅力を引き出し、誰もが迎える問題にあたふたしつつも、家庭を切り盛りする篤子を明るくコミカルなタッチで演じきる。そんな篤子を翻弄する面々の筆頭の姑役に、芸能生活71年目の草笛光子。自身のキャリアの中でも類を見ない”異例の変身”への挑発も必見!夫役に天海とは初の夫婦役となる松重豊、そして新川優愛・・・。 主題歌を担当するのは氷川きよし。煌びやかなステージと圧倒的な歌唱で幅広い人気を博す氷川が、本作のために歌い上げる新曲は「Happy!」。その、明るいサンバのリズムが鑑賞後の幸福感をさらに盛り上げる。 人生100年時代、苦難は事あるごとにやってくる。だけど、泣いてばかりじゃいられない! 絶体絶命の大ピンチに、果たして、”Happy!”な未来はやって来る!? |
(3)「STORY」
主婦・後藤篤子(天海祐希)は、困っていた。家計は妻に任せきりの夫・章(松重豊)の給料と篤子がパートで稼いだお金をやりくりし、フリーターの娘・まゆみ(新川優愛)と、大学4年生の息子・勇人(瀬戸利樹)を育てながら、節約をモットーに生きてきた。月謝5000円のヨガ教室だけが自分に許した小さな贅沢で、憧れのブランドバッグも必死に我慢して、老後の資金をコツコツと貯めてきた・・・はずなのに! 身の丈に合った日々を送る篤子の生活は、突如綻び始める。入院していた舅のいまわの際に、章の妹・志津子(若村麻由美)に喪主を押しつけられ、葬儀代400万円近くを支払うことに。折り悪く、密かに正社員登用を期待していたパート先をリストラされ、なかなか次の仕事が見つからないところに、まゆみが連れてきた結婚相手は、年収150万円のバンドマン・琢磨。彼は地方実業家の御曹司で、芸能人御用達の式場での盛大な披露宴を希望しており、両家折半でも後藤家が支払う費用は最低300万円だという。つい先日まで700万円ほどあった貯金があっという間に0円になってしまいそうな、後藤家大不況のさなかに、今度は章の会社が倒産!住宅ローン完済の当てにしていた退職金は1円も出ず、結婚30周年を目前に夫婦そろって失職してしまう。 それでも篤子の銭闘は終息が見えない。金銭感覚が麻痺しそうになりながらも、自家用車の売却やレンタルモップの解約など、家計のダウンサイジングを次々と断行するが、そんな努力もむなしく、出費地獄から逃れることができないのだ。いよいよ毎週9万円の姑・芳乃(草笛光子)への仕送りを捻出できなくなり、志津子夫婦との金銭面での話し合いの席で揉め、芳乃を自宅に引き取ると口走る篤子。 そうしてスタートした芳乃との同居生活。老舗和菓子屋の箱入り娘として育った芳乃は、良いもののためには金に糸目をつけない浪費家だった!芳乃の豪快な金遣いが、後藤家の家計をますます圧迫する。お金の悩みは尽きないが、親友のサツキ(柴田理恵)たちとの交流も手伝って、姑との暮らしにも慣れてきたある日、今度は「生前葬をする」と言い出した芳乃。散々家族に振り回されてきた篤子は、ついに我慢の限界に達する! 果たして篤子に、豊かな老後はやってくるだろうか・・・!? |
(4)「後藤篤子のギリギリ家計簿」
街頭ビジョンで、著名な経済ジャーナリストが「老後の資金は、4,000万円必要です!」と声高に叫んでいる中だが、結婚30年、50代半ばの後藤夫妻の家計簿は・・・!?
(5)「後藤夫妻、シェアハウスでの新生活」 章の再就職&篤子のパートが決まり、勇人が就職して会社の寮へ入ると決めたことを受けて、篤子と章は自宅を売却し、なんとシェアハウスで新生活をスタート!ここではそんな2人のシェアハウスでの生活を紹介! <そもそもシェアハウスとは?> 自室の他に共有スペースのある賃貸住宅で、一軒家、アパートなどさまざまなタイプの物件がある。個人でのルームシェアと異なるのは、物件には管理業者がおり、キッチンやリビングなどの共有部分の清掃や管理が行き届いている。入居に際しては、敷金礼金、電気・ガス・水道・インターネット代などの公共料金なども個人で部屋を借りるより節約できるため、通常の賃貸より全体的に費用がかからず、暮らしの中では他の住人とのコミュニケーションが楽しめる。現在は、シニアから若者まで違う世代の人たちが共に暮らし、お互いの足りない部分を補い合って生活する異世代シェアハウスも増えている。これにはどの世代の人も社会から孤立せずに生活ができるというメリットがある。 <篤子と章はなぜシェアハウスを選択?> 「シェアハウスを選んだのは、経済的な理由だけではない。ここにはプライバシーも確保されているが、同時に他人を尊重しながら物や時間を分ち合い、助け合えるコミュニティーがある。それは意外と心地よい場所だ。先のことはわからない。でも、私は今、人生をちょっぴりわがままに楽しんで生きている」。物語の最後に篤子はこう語り、生き生きと生活する様子が描かれている。
(6)「芳乃式 生前葬のススメ」 本作のクライマックスとなるのが芳乃が生前葬を行なうシーン。篤子不在の中で始まった式には最後に大きな感動が・・・。そもそも生前葬とは本人が喪主を務め、生きている間に、友人、家族、お世話になった人への感謝の気持ちを直接伝えるもの。亡くなってからの葬儀とは異なり、自身がどのような会にしたいかを自由に決められるため、その人の個性が発揮できるのも魅力で、ポジティブな気持ちで実際に行なう人が増えつつあり、そんな生前葬、後藤家のゴッドマザー、芳乃の場合は? <準備> 生前葬の日時、ドレスコード、香典代わりの会費などが書かれた案内状を準備。芳乃は、来てもらいたい人たちへ送る封筒の住所や名前などは手書きで思いを込めて書く。 それと並行して、会場探しや当日振る舞う飲み物などの手配をする。芳乃の場合は、仲良くなったヨガ講師の城ヶ崎の豪華な家の庭を借り、食べ物は持ち寄ってもらうなど、ホームパーティー寄りのしつらえだ。ちなみに会費は1万円、会場レンタル代は0円♪ <会場設営> 会場奥の向かって左側に遺影&献花台、右側に芳乃が座る椅子(背もたれの外側が白い羽で囲まれたアジアンテイストの素敵なもの)を設置。ゲスト用のテーブルは、丸テーブルにそれぞれ違うクロスがかけられ、中央にカラフルな風船をあしらったものが庭の外側に並べられ、食べ物&飲み物はそれぞれまとめて奥のテーブルに。中央部分はゲストが歌や踊りを披露するスペースに。また、芳乃の人生を振り返る、子供時代から現在に至る写真が映し出されるモニターも設置。手作り感満載のポップでアットホームな会場ができあがった。 <生前葬> ★ゲスト入場・・・会場の右手前に建てられた白いチュールを巻いたかわいいゲートをくぐり、秋晴れの会場に、家族、ヨガ仲閒、古い友人たちが入場。 ★歓談タイム・・・篤子の両親の太平&波子がタヒチアンダンスを披露、一緒に踊る城ヶ崎や、芳乃に挨拶する人、芳乃の人生を振り返るモニター前ではそれを鑑賞する人たち、おいしそうな食べ物を頬張る人たち、章は太平たちのダンスに拍手を送るなど、ゲストたちは思い思いに楽しんでいる。 ★開始挨拶・・・司会進行の城ヶ崎にエスコートされ、マイクを手にした芳乃が、ゲストや城ヶ崎へのお礼の言葉を述べて会がスタート。 ★松平夫妻のデュエット・・・まゆみの結婚相手・琢磨の両親、金造と美和が「ふたりの愛ランド」を仲良くデュエット♪ ★琢磨熱唱・・・琢磨は得意のヘビメタではなく、「また逢う日まで」熱唱を芳乃やまゆみに捧げる。 ★章の挨拶・・・章が長男としてゲストに「(母が)天国に旅立つまで、末永くよろしくお願いします」と挨拶。 ★芳乃の最後の挨拶・・・心臓に病を抱える芳乃は「いつぽっくりいってもおかしくない歳だ。ですから、生きている間にお世話になった皆様がたにお礼を言っておきたかったんです」と話し始め、夫が亡くなって以来の自分の行動の裏側にあった本当の気持ちを吐露していく。 ★篤子乱入・・・芳乃の心臓の薬を届けに来た篤子、茂みにしゃがんで芳乃の言葉を聞いていたが、その本心を知り、驚きのあまり立ち上がってゲストがくぐったゲートを倒してしまい、芳乃やみんなに気付かれてしまう。芳乃はそのまま自分の思いを直接篤子に伝えて・・・。手を取り合う2人をゲストの温かい拍手が包み込む。 ★フィナーレ♪・・・芳乃と篤子が「ラストダンスは私に」を楽しくデュエット、ゲストも笑顔でダンス♪♪ |
(7)「経済ジャーナリスト 荻原博子」
本作が初の映画出演作となった荻原博子先生が、経済ジャーナリストとしての視点から、作品内容への感想、篤子たち夫婦の最後の選択へのアドバイス、さらに老後の資金に不安を抱く家庭のお悩み解決の一助となる方法を伝授!「お金は人生の補助輪」と語るその考え方とは・・・。 この映画で描かれていることは、経済ジャーナリストとしてもとてもリアルだと思いました。お金のことを含めて「こういうことは実際にある」と共鳴しましたし、物語も面白く観られました。そして、どんな状況にあっても、よりよく生きていくためには前向きなことが大切で、それがあれば幸せなんだと、あらためて感じました。 篤子さんたち後藤家の冒頭の経済状況は、まだ50代の夫婦で退職金をもらう前ですから、貯金額が700万円であることは全然低くなく、むしろよく貯めているほうです。今は意外と余裕のある家庭が少なくて、50代で貯金がゼロという場合もありますから。 そんな中、ニュースで「老後の資金は2000万円必要です」と言われたりすると、心配になる方も多いでしょうが、20代や30代の若い方々は、老後の資金のことはあまり考えなくていいと思います。若いうちに個人年金などを始めたとしても、いざ老後になった時に貨幣価値が変わっていることもあり得ますし。現在の私たちは、1万円あればちょっとおいしいものが食べられますが、将来はラーメン1杯が1万円になっているかもしれません。だから、若いうちは目先の生活をしっかり考えればいいと思います。 ただ、なるべく借金をしないことは重要です。住宅ローンを組むとしても50歳くらいまでの返済計画を立てるか、繰り上げでどんどん返済したほうがいい。仮に50歳で蓄えがゼロでも、ローンを支払っていた分をそのまま貯めていけるし、子どもが大きくなっていれば教育資金分も貯められます。さらに、子育てに手がかからなくなれば共働きもできますし、年間200万円くらいは貯金ができるようになり、それを60歳まで続ければ2000万円が貯まる、という計算が成り立ちます。夫婦の年金がどのくらいかといった情報は、ネットでも簡単に調べられますから、その上でいくらあれば生活できるか、ということに気を付けていれば困ることはないのではないでしょうか。 また、子どもの教育費に関してですが、もはやいい学校に行っていい会社に入れば安泰、とは考えにくい状況です。今やるべき教育とは、きちんと自身で稼いで、生計を立てられる子に育てる、ということかなと。そうした観点から考えると、マンガやゲームなども、親は「どうなのかな?」と思うかもしれないですが、子どものやりたいことをやらせてみることも大切です。人は好きなことなら頑張れますし、時代はどんどん変わっていくので、親の価値観が子どもの将来にも通じるとは限りません。 人間が幸福を感じる度合いって、実はある程度の年収になるとさほど上がらなくなるんですよ。さすがにお金がゼロだと生きるか死ぬかだから苦しいですし、年収200万円よりも400万円のほうが幸福度は上がりますが、800万円を超えると、それ以上は幸福度があまり上がらないということが、いろいろな研究や論文で言われています。だから、お金は困らない程度にあればいい、人生の補助輪なのです。大切なのは自転車をこぎ続けていくことで、補助輪が大きくても早く走れるわけでもないし、幸せになれるとも限りません。 ではどのくらいあればいいのか・・・、その見極めは難しいかもしれないですが、私は自分が何をしたいのかを考えればいいと思います。例えば今、1億円あったら何をしたいのかを聞かれたとして、明確に答えられる人は少ないものです。私の場合も「あそこのワインがおいしかったから、また飲みたいな」くらいですから、膨大に余りますよね(笑)。でも、「私はロケットを飛ばしたい!」という目標がある人には1億円でも足りないかもしれない。お金はたくさんあればいいかもしれませんが、自分にとって本当に必要な使い道を考えてみると、それほど多くはいらなかったりするものです。 篤子さん夫婦は映画の最後に1400万円の貯金でシェアハウスに引っ越しますが、経済的には安泰だと思いますから、いい選択だといえます。ただ、シェアハウスは人間関係が大切。いかに摩擦を起こさず、自分を尊重しながら人も尊重する生活ができるか。昔の日本は、隣近所や大家族といったコミュニティーの中で育つことで、自分以外の人とどう暮らせばいいかを学習できる機会が多かったのですが、人との付き合いが希薄かつ直接的でなくなっている時代ですから、そこを学び直す必要があるかもしれません。人間関係がうまくいかないと、また引っ越すことになってしまい、お金も余分にかかってしまいます。 日本人は人目を気にする傾向が高いとは思いますが、これからは人を基準にしてはダメだと思います。まずは、「自分はこういう人生を歩もう」と自分自身が決めること。それがスタートです。その意味で、篤子さんたちはいい選択をしたと思います。やりたいことに見合ったお金があって、円滑な人間関係を築くことを心掛け、前向きでいることを意識すれば、よい老後になると私は思います。夫婦2人なら仲良く、もし1人になっても周囲の人に「ありがとう」と言ってもらえれば、人生は幸せに過ごせると、ボランティアに行く方も、人のためだけではなく、それが自分のためであったりもするわけですから。「情けは人のためならず」ですよ(笑)。 この映画は、“老後の資金”という題材の中で、人が前を向くことの大切さ、人の温かさなども学べて、観るとプラスになる作品だと思います。一緒に観たら、仲のいい家族はより絆を深め、あまりうまくいっていない夫婦やお姑さんや小姑さんの場合でも、仲良くなれるきっかけが見つかるかもしれないですね。 |
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